3月のライオン

3巻を読みました。1〜2巻の感想を踏まえた上で、3巻について。


将棋に翻弄されてきた人生。生活の術として将棋。そして、1人で生きていこうと。そんな孤独になっていた。だから、周りからの人の温かさを感じて、だからこそ一人の自分に気がついた時、その幸せが怖くなる。「失いたくないから手に入れない」そんな人間だった零が人間としての熱を帯び始めている。そして、零が落ち着く事が出来る家庭も、欠けたものを抱きながらも笑おうとする強さと、そのさびしさに負けてしまう弱さをあわせもっている川本家だからなんだろう。
しかし、まだコントロール出来ていないのだな。にしても、香子が相手にこの人を選んでしまったというのはなんという因果というか、それ自体も零に対する憎悪とか復讐の類なのだろうか?

羽海野さんはこだわりが強いと書いたが、それはキャラクターにも反映されていると思う。脇役についても徹底したディティールで強いこだわりがあるのだと思う。ヤングアニマル本誌での休載が多いのもそのせいかな。それぞれのキャラクターが、確かな温度と輪郭を持っている。「ただ流れ上出ているだけ」の登場人物がいない。逆に言うと、そのような登場人物にもきちんとキャラ付けが為されている。そして、単なるギャグ要素だけの人物がいない。どれも、主人公である零の流れ・ストーリー上に確かな影響を与えている。とにかく丁寧。1巻5話の最後と3巻30話の最後の関係性。あぁ、愛すべき兄弟弟子。零も本当に愛されている。ただ、これだけ愛されていても不安を抱くなんて、今までの飢えが相当なものだったのだろう。

「まぁ、なんていうか。あらゆる物語のテーマは結局愛だよね。」という言葉が思い出される。1番好きな作家の1番好きな小説に出てくる言葉。まぁ、なんていうか。3月のライオンのテーマも結局愛だよね。

あと、扉絵が毎巻1つのストーリーになっているのがいい!

ちなみに…
1巻の感想
http://d.hatena.ne.jp/ukicyun/20080228/p3
2巻の感想
http://d.hatena.ne.jp/ukicyun/20081231/p1