今更だが映画「フィッシュストーリー」の感想を書く。

発売当時だれにも聞かれなかった曲が、時空を超えて人々をつなぎ、世界を救う!『アヒルと鴨のコインロッカー』のチームが贈る、伊坂幸太郎ワールド第2弾!
1975年。セックスピストズが世に出る1年前。「逆鱗」という日本の売れなかったパンクバンドが出した最後のレコード「FISH STORY」を制作した。その曲には1分間の空白があるのだが…

1980年。気の弱い学生。合コンで。「あなた、一度でも何かに立ち向かったことがある?」と女の子に言われた。その帰り道で…。

2009年。修学旅行の女子高生は1人船から寝過ごしてしまう。その後、その船がシージャックされる。しかし、その船には「正義の味方」になりたがっていたパティシエが乗っていて…

2012年、ノストラダムスの予言が遅延し、彗星が残り5時間で地球に衝突する。そんな中、地球最後の希望となるシャトルが打ち上げられた…。

これに1つの時代のエピソードが加えられて、5つの時代からなる物語。劇中に出てくるゴレンジャーとはこの5時代の登場人物のことだと思う。

1975年。セックスピストズが世に出る1年前。「逆鱗」という日本の売れなかったパンクバンドが出した最後のレコード「FISH STORY」が、巡りめぐって、2012年に地球の危機を救う…という「セカイ系」の話。このエピソードだけで想像したら、アルマゲドン的な壮大エピソードだと思うかもしれない。しかし、この映画は激しいミッションシーンもなければ、視覚が喜ぶようなCGを駆使したSFシーンも無い。

話の中心になるのは、1975年の「逆鱗」というロックバンドのエピソードだ。ビートルズが解散し、ロックブームは終焉。ましてパンクロックなんて誰も認めてやくれない。売れるために、納得の出来ない曲の制作を強要される。そんな中、彼らの最後の曲である「Fish Story」は…。

レコード制作を巡る対立、メンバーの悩みなど、この部分の情景描写を丁寧に描くことによって、メンバーによって終盤に語られる「フィッシュストーリー」(英語で「ホラ話」という意)が、ただのホラではなく「あってもいいんじゃないかな、それくらいのことは」って思うことが出来る。

1つ1つシーンでじっくり見せる所はじっくりと、アクロバティックな所はテンポ良く。そんなに深みのある物語じゃなかったけど、飽きずに見ることが出来た。最後の1つに繋がった時の、爽快感は見事。娯楽作品としては良作だろう。アフタースクールよりこっちの方が好み。

だれにだって、「譲りたくない」部分はある。でも、それを「譲れない」と固辞することは難しいことだ。「状況を変えたい」って思うことは出来ても、「実際に変えるために動く」ことは難しい。しかし、そんな「本気」が、「勇気」が、何よりも「覚悟」が見られる。

この物語に出てくる1つ1つの時代のエピソードは、全てどこかで見聞きしたことはあるような話。どれも、地球を救うような壮大な話に比べれば小さい小さいものだ。だけど、そのエピソードの中で、人物1人1人は覚悟を決めて身を投げ出すのだ。

覚悟が、歴史を変えるのだ。

[関連]
アヒルと鴨のコインロッカー
http://d.hatena.ne.jp/ukicyun/20080303/p3