今更だが「笑う犬2008秋DVD Vol1.2」の感想を書く。

あのコント番組のDVDです。

笑う犬の生活」これは、僕のお笑い好きの原点だ。そして、この番組はフジテレビの中でも多大な影響を与えた番組でもある。そして、バラエティの低予算化という過渡期の中で、度重なる枠移動やめちゃイケ・はねる同様ロケ形式への変更を経て終わってしまった番組。

しかし、この番組は偉大だ。まず、現在のフジテレビのマスコットキャラクターである「ラフ君」は、そもそもこの笑う犬のマスコットキャラクターであった。

そして、この番組は「コント師内村光良と「コント師ネプチューンが共存している唯一の番組だ。内村は現在でも「ザ・テルヨシ」としてイロモネアに挑戦したり、レッドシアターでもユニットコントに参加。そして、未だにマセキの事務所ライブにもMCとして参加し「ザ・テルヨシ」名義で新ネタも披露している。そして、去年からは秋にさまぁ〜ずと一緒に舞台にも挑戦している。一方、ネプチューンもお笑いライブまではしないものの、現在でも定期的にコントDVDを制作している。そんな、コント師の共演がたまらない。

今回のDVDでは、ミル姉さんから始まり、生きる・大嵐浩太郎・ユキオとひろし・アナウンサー学校パタヤビーチを初めとする生き生きとしたキャラクター達が帰ってきている。それだけで嬉しい。

いくつか例を挙げる。

例えば、「アナウンサー学校」というコントがある。これは、堀内の奇怪なフレーズを笑いを堪えながらも生徒達が復唱していくというコントだ。このコントは、一見すべて堀内のアドリブで構成されていると思われている。しかし、実は精巧に作りこまれている。あのアドリブ感に溢れているネプチューンのコントは、実はアドリブはほとんど無い。つまり、堀内は精巧に作りこまれた笑いを共演者にぶつける形だ。かつて、西川貴教がANNを担当していた際「ネタハガキは事前に読まない。俺は作家を信用しているから。あいつは絶対に面白いハガキを選ぶから。俺は初見でリスナーと一緒に楽しむのだ」と語っていたことがあった。まさに、その状態なのである。つまり、共演者を堀内のコント師として信頼しきっているのだ。だって、共演者が笑わないとそのコントは成立しないのだから。そして、共に楽しむのだ。笑う犬ではそういう「笑わせる対象がいるコント」は堀内が担当することが多い。例えば、パタヤビーチでは内村・堀内の2人が原田・中島にショートコントを披露する。大嵐浩太郎でもこの2人がレッドカーペットに出演するという形である。「生きる」では堀内が原田に生きていることを実感させる。即興性を生み出す「空気を作る」コントにおいて堀内は多大な影響力を持つ。しかし、それは作りこまれている。(事実、最近ホリケンは日テレのドラマではシリアスでどこか狂気のある演技をしている)

一方、原田はドラマ仕立てのコントにおいて影響力を持つ。「笑わせる対象がその場にいないコント」。コントの最中に共演者が笑いを堪えている映像を挟まないコント。それは、物語の流れを大切にしながら、きちんと笑い所を作る事作業。原田はドラマに出演するなど定評のある演技でそれを難なくこなす。カメラワークやストーリーの構成・演技力で魅せる笑いを提供している。「てるとたいぞう」はその代表だ。空気に馴染めるコント師だ。

つまり、堀内は1発のキャラコント、原田はシチュエーションコントに対して無くてはならない存在なのである。

そして、この2パターンのコントの手綱を裁く内村光良。彼は「空気を作る」「空気に馴染む」そのどちらのコントも演じる事が出来る稀有なコント師だ。哀愁のある数々キャラクターを演じ、一方では「ユキオとひろし」(僕が今回1番好きだったコント)のような馬鹿馬鹿しい哀愁無しの勢いコントには自分は出演せず、ネプチューンの同僚である名倉・原田で組ませている。後は、堂々と他人のギャグを使っちゃう姿勢も素晴らしい。

コントで大切なのはその配役だ。自分の中に無いキャラを演じてはならない。それは、視聴者にウソを実感させてしまう。それが分かってるんだなぁ。

年齢を重ねるにつれて哀愁を身にまとい、更にコント師として進化していく内村光良。年齢を重ねても(良い意味で)いつまでも変わらないネプチューン。この2組の化学反応をいつまでも定期的に見たい。

もちろん、名倉・南原・オセロ中島遠山景織子もいいんだよなぁ。特にサチは堪らない。レッドシアター組では、我が家の坪倉が凄くいい働きしてた。

現在、テレビコント=シチュエーションの使い回しで制作費を抑えているのが現状である。そんな中、上質なテレビコントを供給する手段として「DVDとしてのコンテンツ化」としてペイをするしかないのである。さしずめ「テレビライブ」と言った所であろうか。そのためには、「何度見ても面白い」ものを制作し続けなければならない。失敗したらそれで終わりだろう。しかし、笑う犬は2010新春にも特番が決定している。おそらく、これもDVDの宣伝としての番組であろう。だが、そのおかげで定期的に笑う犬が見れるのならば、それは望ましいことだ。