劇薬

雲ひとつなく澄んでいる青空が残酷にあざ笑っている。笑いたい時に笑えないし、笑いたくない時に笑ってるし。目の前にいる人の癖を笑いながら陰口っぽく話すなよ。ほら、またあんたとは距離を取るようになった。また面倒な感じになる。安心は売ってないのかなぁ?安心を買いたい。「安心=退屈」だったとしても、その安心が逃げ道だとしても。
たいした問題じゃないんだ。誰かに助けを求める程の問題ない。泣いて救いを求めれば悲劇のヒロインなれるなんて思ってるん?馬鹿じゃん。人間なんて誰もが自分がヒロインじゃん。特別視されとる思っとるん?
夜、外界の音を聞きたくないからって耳と耳を曖昧に縫っていたんだ。行き過ぎた行為はやがて劇薬に変わる。劇薬の中毒性なんか怖がんないの。もっと劇薬が欲しくて手首を見つめるの。胃の中の炭酸が暴れだしてる。ぐるぐるぐるぐる。
自分を蔑めば、いつまでも子供でいられるし周りの人も優しくしてくれるんだ。でも、嫌なの。だって、人間なんて誰でも自分がヒロインでヒーローじゃん。「生きて」たって意味ないの。「活きて」ないとダメじゃん。なんてね。偉そうな政治家マインド死ねよ。どーでもいいじゃん。散々な毎日の刺激は甘いサイダーではなく苦いソーダみたいだ。
夜の闇が優しく微笑みかけるのを背に受け、ただ自転車で駆けていく。Tシャツの首筋には赤い染みが濃く広がっていく。夜は飲み込む。ぐるぐるぐるぐる。